インタビュー

これまでにインタビューさせていただい方々

第10回 小松 比奈恵 さん
大物感の漂う25歳
サロンが元気の特効薬!
人を変えるより自分が変わる
ハワイのアジア系女性を救ったホノルル店

大物感の漂う25歳

久保
私が比奈恵ちゃんと最初に会ったのは、比奈恵ちゃんのお店がオープンしたか、するところか……。その頃よね?
小松
はい、25歳でした。私が六本木美容室をオープンしたのが1977年。当初は自分のアトリエ兼サロンのつもりで立ち上げたから、いまみたいに3店舗も持つようになるなんて思わなかったのよね。
久保
いえいえ、私は最初に遊び場で出会ったときから「この人は、ゆくゆくは大きな仕事をしていく人だ」と思ってました。そのくらい大人っぽかったし、貫禄があった。
小松
当時は『男と女』のアヌーク・エメのような大人の女性に憧れていたし、世間からなめられちゃいけないと思っていたね。それに周りも、みんな何がしかの人物になって名を上げようと思ってる、欲と希望に満ち溢れた人ばかりだったでしょう。そういう仲間と夢を語り合ってると、若くてもそれなりの顔になるのよ。でも、そんな私たちの前に現れた年下の京子ちゃんは、とってもピュアでかわいかったの! それはそれは目立つし、もてたと思うわ(笑)。
久保
いえいえ、全然。
小松
でも京子ちゃんの魅力がぐっと出てきたのは結婚してからね。一生懸命、背伸びしていた部分を全部取っちゃってナチュラルになったら、本当の自分がボンッと出てきて、時代が求める80年代的ナチュラル志向の顔になった。
久保
ハーフっぽく見せようと無理していた70年代を過ぎて、「もう無理なことはいいや」と思い始めたら急にラクになったんです。でも、その頃、比奈恵ちゃんはすでに2軒目のお店を出してたでしょう!? すごいわ。
小松
別にお店を増やしたかったわけじゃないのよ。スタッフが育っちゃって、お客様のカットやセットをする“サロン面”が足りなくなってしまってね。限られたスペースに過剰なスタッフがいたら、次は椅子の奪いあいが起こる。やっぱり仕事ができるスペースは大事だから、成長した子たちが存分に働ける環境を作ってあげたかった。それでもう一軒、店を出したのよ。
 


サロンが元気の特効薬!

久保
さずが! 素晴らしいわ。
小松
スタッフは勝手に育っちゃうのよね。
久保
そう言えるのもすごいと思う。でも経営者が「育ててます」なんて意識でいたら、ちょっと変な子が育ってしまう気がする。
小松
育てようなんて思っちゃダメ。私は新人には「私と一緒に仕事をしたかったら早くシャンプーを覚えてね。上手になったら私のお客さんをやらせてあげるわ」と言います。
久保
「あなたも一緒に舞台に立っているのよ」ってことを、分からせるのね。
小松
そう。舞台の真ん中へのステップはやっぱり自分で上がってこなきゃ。うちのサロンは全員、カット用のハサミが違うんですよ。同じのを使っていたのでは先生を超えることはできないから「値段の高い安いに関わらず、最高に自分の手に合うハサミを見つけなさい」と、言ってある。
久保
試行錯誤しながら自分で探すのね。でもそれぞれの個性がちゃんとあって、みんなが上手くなろうと一生懸命だから、比奈恵ちゃんのサロンはあんなに心地いいのかも。
小松
ホント? 実は私も自分のサロンに行くと元気になるのよ。風邪ひいてても頭痛くても、頑張ってる若いスタッフを見ながらサロンで働き出すと、とたんに元気になる。ドリンク剤飲むより効きます。サロンは(笑)。
久保
特効薬なんだ。でも、分かる。私もスタジオに入ったり、外で打ち合わせしているときの方が調子がいい。逆に3日以上休みが続くと死んだようになっちゃって(笑)。仕事場にいるほうが“気”をもらえるよね。
 


人を変えるより自分が変わる

久保
だけど人の上に立つと大変じゃない? 真心の接客というか、技術とは違う大事な部分に早くからちゃんと気づく子もいれば、なかなか気づかない子もいるでしょう。下の人たちの自主性に任せていると、いろいろ我慢することも多いんじゃない。
小松
以前はアシスタントが現場でドジをしたり、大忘れ物をしたりしたときは見てみぬフリをしてました。もちろん「カチン」とくるのよ。でも、そこで叱ってしまうと私たちの仕事は手に出てしまうんです。私が得意とするメイクはふわっとして柔らかい線や、さりげないニュアンス。だけど怒ってしまうとそれができなくなる。だから自分のためにその場では怒らず、帰り際にサラリと注意する。
久保
その方が言われたほうはこたえるね。
小松
そうかも知れない。でも、そうしているうちに腹もたたなくなったの。ちゃんと確認しなかった自分が悪かったな、と思えるようになってね。だから最近は「人に期待しないで自分を変えなさい」と、うちのスタイリストたちにも言ってます。
久保
確かに私も、何か頭にくることがあったとしても、カメラの前では怒りは脇に気持ちを切り替えないと、仕事にならないな。
小松
そうね。それで帰り道に夕飯の買い物をしたりすると怒りはかなり薄くなるからね。「あ、今日はきゅうりが安い」って(笑)。
 


ハワイのアジア系女性を救ったホノルル店

久保
ところで2年前にハワイのホノルル店をオープンしたでしょう。この出店もスタッフさんのためだったんですって?
小松
そう。うちに10数年務めたスタイリストの子で、一時退社してハワイに語学留学した子がいたの。その子が予定の期間が過ぎても帰ってこないし「帰りたくない」というので話を聞いたら、実はBFができてるわけ。「私、だまされちゃった」と思ったけど、その時にパッとひらめいたの。ハワイには黒くて多いアジア人の髪のケアができるサロンが無かったから、彼女らは行くところがなくて困っていたのね。その人たちの間で評判になっちゃって2ヶ月で軌道に乗っちゃった。
久保
良かったね。でも結局、比奈恵ちゃんはハワイでも仕事、仕事になっちゃったんでしょう。最近、スローライフに憧れてたのに。
小松
そうなのよ。例えば正月休みにハワイに遊びに行っていて、仕事は10日からにしようと思っても、お客様は休みのうちに髪の手入れをしたいから予約が入っちゃう。大好きなゴルフの日も結局、仕事しちゃう。
久保
ほら、だから、やっぱり仕事が好きなのよ。比奈恵ちゃんは。
小松
そうね、嫌いではないかな……。でも結局はこれしかないということも分かってきたの。私はいま53歳で、まさかこの年まで働くとは思っていなかったけど、せっかくならずっと美容に関わっていたいと思っているんです。中年から壮年を迎えていく世代の女性たちにアイデアを提供していきたいし、自分自身もやれるだけやって、生きるだけ生きてやるという気持ちでいます。
久保
頼もしい! ついていきます(笑)。
 


【編集後記へ】
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