インタビュー
これまでにインタビューさせていただい方々
- 久保
- 私がモデルになりたての頃はマリさんが大活躍していた時代。コマーシャルもショーも雑誌もすべてやっていらっしゃったマリさんは殿上人。憧れの存在でした。
- 我妻
- あの頃はハーフ全盛の時代でしたからね。
- 久保
- マリさんの舞台には、独特なオーラが漂っていて、マリさんならではの世界観が感じられました。当時山口小夜子さんと我妻マリさんは「東の横綱と西の横綱」。お二人はあの時代に無くてはならない存在だったと思います。
- 我妻
- そんな、おそれ多い(笑)。でも小夜子さんがいたから、私も頑張ろうと思えましたね。
- 久保
- お二人に共通していたのは『服を見せるだけでなく、背後にある物語を見せていく』ところ。世界観はそれぞれ違うけど、お二人とも舞踊やパフォーマンスを取り入れていて、オリジナルのショーになさっていたのがすごい!
- 我妻
- 私はもともと踊りをやっていたから体を動かすのが好きなの。それでパフォーマンスもやらせていただけたのね。小夜子さんはより舞踊の方にいきましたが。
- 久保
- 小夜子さんのショーは服よりも小夜子さんご自身の方が強い感じ。モデルというよりパフォーマーとしての意識が強かったんじゃないかな。でも、マリさんは「イッセイミヤケの服だからこう見せよう」という“モデルとしての意識”が強かったように思います。踊りも服を素敵に見せるための一つのツールというか。
- 我妻
- そうですね。小夜子さんは自分のキャラクターをすごく意識していた方だけど、私は与えられた服や宝石と“一体化”するのが好き。物を見せることに集中したいんですよ。だから現場に行ってステージの感じやライトの当たり方、音の具合などもちゃんと確認しないと落ちつかない。その“場”と一体化するのが好きなんです。モデルって“一瞬の夢”を作り出すのが仕事でしょう。その一瞬に命をかけるってすごく面白いし、スタッフと力を合わせていいものを作りたい。だから現場のことも知っておきたいし、スタッフとも馴染んでおきたい。みんなで力を合わせないといいものはできないですからね。
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- 久保
- モデルの仕事に“慣れて”しまうことはないですか?
- 我妻
- ううん。気が小さいからいつもドキドキ。私、すごく不器用なんですよ。真っ直ぐ道を歩けないし、自転車に乗っててもぶつかるし、すごくドジ。そういう自分だから毎回、一生懸命なんですよ。人よりも不器用だから人一倍、努力しないと舞台でも真っ直ぐ歩けないの。
- 久保
- そんなことを考えながら超然と歩いていらっしゃるとは思わなかった!
- 我妻
- 私は昔から現実の社会が怖くて怖くて・・というところがあるんです。子供の頃、混血ということでいじめられたりしたから、人が怖かったんですね。だから動物と遊んだり、自然の中にいる方が落ちついたの。ただ、私はいろんな血が混じっているせいか、アグレッシブな面もあって、モデルの仕事をしているときはその強さが出るみたいなの。
- 久保
- でも、いまは自然と共存する生活が快適?
- 我妻
- そうね。朝、起きてまずやることは花の水を替えること。野鳥にパンをあげること。私、田舎育ちだから、都会で自分を保つためには、いつも自然と波長を合わせて共存して、自然を肌で感じないとダメなの。だから夜は星や月を見上げてお話しする。昼間も雲を見て感動したり・・・。ほら、雲ってすぐに形が変わるでしょう。
- 久保
- 二度と同じ雲には出会えないですものね。
- 我妻
- そう。それが素晴らしいと思うから、自然のものはすべて尊敬しています。若い頃は夜通し遊んで仕事に行ったりもしたけど、いまは自分をクリーンに保つためにも、夜空の星とお話しする時間を大切にしていますね。「あ、呼ばれてるぞ」と思うと窓を開けて(笑)。
- 久保
- 私もどちらかというとそういうタイプ(笑)。
- 我妻
- ただ、そっちばっかりやっちゃうと危ないですね。癒されはするけど現実の世界に戻って来れなくなる。日常生活では転ばないように、ちゃんと生きていけるように、毎日がサバイバルです(笑)。
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- 久保
- では、マリさんがこれからやっていきたいことを教えて下さい。
- 我妻
- 服を作りたい。
- 久保
- どんな服ですか?
- 我妻
- 女性はいくつになってもオシャレしていたいと思うし、するとイキイキする。「今日は具合悪いわ」と思っていても、お化粧をし始めると元気になっちゃいますね。いろんな発想も食欲も好奇心も湧いてくる。だから中高年や高齢者こそオシャレが大事だと思います。自分も含めていい大人の女性が着たいと思う服が少ないですね。
- 久保
- 顔映りのいい服がないですよね。グレーでも品のあるグレーや優しいグレーじゃなくて、ネズミ色なの。
- 我妻
- そう。変なベージュの服とか、さえない色が多いです。海外のお年寄りはショッキングピンクとか着ていてきれいじゃないですか。どうして日本にはそういう服が無いのかしらね。それにカッティングが悪い。
- 久保
- 消費者も分からないままそれを着てるから、ますます老け込んじゃうんですね。もっと顔映りが良くて、肌触りがいい、自分を喜ばせられる服があれば、気分も変わるのに。マリさん、ぜひ素敵なお洋服を作って下さい!
- 我妻
- そうね、チャンスがあれば作りたいと思ってます。ときどきデザインを考えたりはしてるの。ちょっとスパンコールやビーズで光り物を入れたり、刺繍を施したりするのがいいかな・・・と。
- 久保
- 妙な光り物じゃなくてね(笑)。
- 我妻
- 今までの仕事を生かし、皆さんをコーディネートしてさしあげたい。どうして日本人はみんな一緒の格好をしたがるのだろうと思いますね。
- 久保
- みんなして同じ色を着ていれば安心するんですよ。
- 我妻
- 日本人はお互いの違いを理解しようとしないからね。西欧では逆に主張しないと相手にしてもらえない。
- 久保
- 個性を、「自分自身はこういう人です」と表現することを、そろそろやってもいいはずですよね。
- 我妻
- ホント。その方が楽しいし、世の中、面白くなる!
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- 久保
- ところでマリさん、いまもクラブで踊ったりは?
- 我妻
- 踊りたい! 踊りたい! 以前、あるパーティーでガンガン踊っていたの。ほら、私は音を聞くと自然に体が動いてしまうんです。そしたら、あとから主催者の人に「我妻さん、踊りうまいですね」って白い目で見られて落ち込みました。「あ、おばさんは踊っちゃいけないんだ」って・・・。
- 久保
- そんなことないです! 絶対、そっちの方が素敵だと思います。
- 我妻
- うちでも音楽が鳴ると踊りだして、カーテンもパーッと開けちゃう。「誰もいなかった。ホッ」と思いながら、脚上げたりして(笑)。
- 久保
- 私はブラブラ体操をやります。さすがに息子と夫の前では「いい加減にしろ」と言われるのでやらないけど、気持ちいいんですよ。1曲、ふにゃふにゃしながら体を動かすと、体がほぐれてすっきりします。自分だけのリフレッシュダンスは絶対いい! 踊ったことがない人もやってみるといいと思いますね。。
- 我妻
- 大昔から私たちのご先祖は火の周りを踊っていたわけだし。踊りは人間の本能ですよ。
- 久保
- ホント。わき上がるものを抑えずに表現できるのはとーっても気持ちいい。
- 我妻
- おばあさんになって体が動かなくなっても、手だけで踊るとかね。
- 久保
- 手で踊ろう! 口紅つけてきれいなお洋服を着て、手で踊ったら、歩けなかった人も歩けるようになるんじゃないかな。「宴の続きは向こうでやるから、マニキュアは赤に塗りなおしておいてね。赤よ、赤」って(笑)。
- 我妻
- 人間は喜びと希望がないと生きていけないの。
- 久保
- 熟年層が喜んで着られるお洋服作りも、お年寄りを元気にするダンスも、まだまだマリさんには活躍してもらわなきゃいけないことがたくさんあります! 私も追っかけていきますから。「マリさ~ん」って(笑)。
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