インタビュー

これまでにインタビューさせていただい方々

第8回 秀香 さん
個性が花開いたパリ・コレクション
シャンソン・デビュー
夢はドレスで杖
頑張ってじゃなくて「頑張ってるね」

個性が花開いたパリ・コレクション

久保
秀香さんは間を味方につけるのがすごく上手ね。今日は、すごく存在感がある写真が撮れてると思うわ。ところで、秀香さんは何年くらいモデルをやっていたの?
秀香
最初は19歳でスカウトされて23歳で結婚するまでの4年。そのあと7年専業主婦してたのよ(笑)
久保
復帰してパリに行ったのはいつ?
秀香
30歳のとき。舞台がオートクチュールからプレタポルテに変わってきて背の高いモデルが求められる時だったの。私は30歳という年齢と、結婚、出産も経験して、ただ若いキャピキャピモデルのときと違ってプロ意識みたいのものがすご~く 芽生えたの。
久保
求められるものが日本とパリでは全然違ってたの?
秀香
そうね。カルチャーショックって言ってもいいくらいよ。日本では女性は三歩下がって謙虚にしているのが美徳といわれるじゃない?でも当時のパリでは男性とカタを並べて生きていける強い女性を新しい時代のミューズとして求めていたの。“肩パット”の時代よ。
久保
そうそう“肩パット”入れてたわよね~。
秀香
私は東京の次はパリって感じだったし、今とは違ってファッション的に当時のフランスと日本では20年の差の感じだった。ファッションの本場のパリで、私がモデルという職業を通じてどれだけ通用するのか試したかったの。決して順風満帆ではなかったけど、ほんとに一歩一歩、一山一山越えてきた感じがしてる。
 


シャンソン・デビュー

久保
パリで持っていたものが一気に花開いたのね。きっと、秀香さんの中にはもともと変幻自在な自分がいたのよ。そうじゃなかったら7年間も小さくなって奥さんなんてできないし、歌に目覚めてシャンソン歌手になることもなかったんじゃない?
秀香
シャンソンは“50の手習い”なの。30歳でモデルに復帰して42歳でモデルを引退してから、コラムも書いたし、ファッショントークやテレビドラマにも出させてもらったけど、迷いばかりだった。モデル時代はひとつの世界を築けたという自負もあったから慣れない仕事でうまくできなくて、プライドズタズタ(笑)結構、私あがり症なのよ(笑)トークではマイク持つ手がこきざみに震えて困ったものよ(笑)。でもどんな時も励ましになったのが黒柳徹子さんの言葉だったの。
久保
えっ、どんな?
秀香
「仕事は嫌なものはしない、どんなにお金が入っても精神的につらくなるから。するならその仕事が好きになるほど練習や努力すること。楽しくするのは自分だよ」って言葉。
久保
それですぐに歌を練習して?
秀香
一度、挫折してやめたボイストレーニングを再開して、上野のライブハウスにオーディションに行って……。
久保
オーディションに? 秀香さんが?
秀香
それがすごくいい出会いがあったの。ある人から「やってみませんか?」といわれたので、じゃあ受けてみようか、と。
久保
やっぱり秀香さんにはいい出会いやチャンスを引っ張ってくる力があるのよね。
 


夢はドレスで杖

秀香
シャンソンを始める前の私は、トークショーとかでみなさんを元気づけないといけない立場なのに、自分の中に何もなかったんですよ。私生活も人生の“まさかの坂”に直面して行き詰ってたし。それがシャンソンに出会って楽しくなったのね。幸い、「声がいいから歌でみんなを元気づけていきなさい」と、言ってくれる人もいたしね。
久保
最初は聞いてる方も、ハラハラドキドキしたけど、最近は秀香さんの声の出し方とか表現力が、めきめき伸びてるのを感じる。私は秀香さんがまだまだ先に行ける、伸び続けられるってことに勇気づけられるし、ちょっと嫉妬心も感じるな。だって、これで二人の孫のおばあちゃんでもあるんだもの!秀香さんは本当に、歌って踊れるおばあちゃまになっていくんだろうな。そして、きっといい恋もしてて……。
秀香
それが恋愛は全然うまくいかないの。せっかくまたシングルなのに。だからシャンソンの悲しい歌がうまくなるのよ(笑)。でもね、子供好きな私にとって孫の世話はホントに楽しいけど、これからは恋の合間におばあちゃんをするのもいいかなって。この間、ある大歌手の方が、杖をつきながら歌っているのを見て、「ドレスで杖も素敵だな」と。成熟した大人の女のムードがあって、こういう女性を目指すのもいいな、と思った。
 


頑張ってじゃなくて「頑張ってるね」

久保
じゃあ、秀香さんは20年後にどんな人生を送っていたいと思う?
秀香
健康な精神と肉体のままで枯れていけたらうれしいけど、具体的にはまだ分からない。毎日ぼーっとしてても、温泉めぐりでもいいな。だって30歳から55歳までの25年間は、結婚生活と子育てと仕事とでめいっぱい忙しかったから、したいと思ったけどできていないことがたくさんあるのよ。
久保
解き放ちたいところはまだまだあるよね。人に「遊びまわってる」といわれても。
秀香
そうなのよ! 私、昔は自分を律しながらこだわって生きてたんだけど、いまは遊ぶときは思い切り遊ぶことにしてるの。「こんなに頑張ってるのに、どうして!」といいたくなるような事件が人生に起こるとさ、お酒を飲みながら「まあ、いいか。しょうがない」と流すことも覚えるのよ。
久保
本当に。親の健康の問題とか、年齢的に避けられないこともあるしね。でも、秀香さんや安藤和津さんのように、いろいろ大変なことがあってもきらきら輝いてる先輩たちがいるから、私もくすめないです。
秀香
女ってマジメだと親のことも子供のこともダンナのことも、すべて自分で背負っちゃうけど、時には荷物を置いたほうがいい。荷物を一つ置けば2本の腕が空くわよ。
久保
素敵! それ、いただきです。
秀香
みんな、もう十分頑張ってるからね。だから最近は「頑張って」のかわりに「頑張ってるね」と言うことにしてるの。
久保
いいですねぇ。さっそく私も今日から真似させていただきます。
 


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