インタビュー

これまでにインタビューさせていただい方々

第14回 蜷川 有紀 さん
短編映画『バラメラバ』が生まれるまで
演劇に恋してすべてを捧げた20代
溢れてくるものを止めたら枯れちゃうわ!
大人の女は、”楽しさ”を武器に!

短編映画『バラメラバ』が生まれるまで

久保
パーティーやショーでお会いすると、蜷川さんはすごく元気で爽やか! ”情念を演じる女優さん”というイメージがあったので、最初はとても意外だったんです。でも、自ら監督なさった短編映画『バラメラバ』を拝見したら、やっぱり”情念の女”(笑)。だけどあの映画に行き着くまでには、すごく時間がかかったでしょう。
蜷川
あの脚本は2001年に鈴木清順さんから頼まれて書いたものでしたが、結局、撮らないことになって……。そこで「じゃあ、自分たちでやろうか」と、まずお金とスタッフを集めて、脚本も練り直し。そしてできたものをカンヌ映画祭に持って行き、帰国後に発表。構想から発表まで4年ぐらいかかりました。
久保
女優一筋だった蜷川さんが制作側にいったのはどうして?
蜷川
女優の仕事は先にオファーがあって、それにどれだけのクオリティーの演技を提出できるか、という仕事。でも、与えられる仕事は100 %納得できるものとは限らない。27年間、女優を続けるうちに、だんだん「もっとこうしたい」が溜まってきちゃってね。表現したい欲求があふれ出てきちゃったの。絵を描いたり、文章を書くようになったのも同じ理由ですね。
久保
分かるなぁ。モデルも同じ。与えられた女性像を完璧にこなすのもプロだけど、それだけだと自分が沈んでしまう気がする。自分という存在が”立ってこない”というか。
蜷川
あとね、私は「私の人生、最高だったわ」と思って死にたいの。だから、ある年齢まで人生の修行をしてきたら、少しぐらい、好きな方向にはみ出してもいいと思うのよ。
 


演劇に恋してすべてを捧げた20代

久保
同感です!
蜷川
よく「器用貧乏にならないように、1つのことをやり続けなければいけない」と言うけど、それは人によって違うと思うのね。1つのことを続けることが向いている人もいるし、それだけだと苦しくなる人もいる。後者の場合は、いろいろやってみた方がいいと思うんです。例えば詩人のジャン・コクトーだって、絵や映画、小説、バレエの空間演出といろんなことをやったでしょう。
久保
私もいろんなことを始めちゃって、ときどき混乱します。でも自分自身、揺れ幅がまだまだあるような気がしているの。周りの女性でも、素敵だなと思う人は人として完全に出来上がっているように見えて、内面はまだ揺れてる。だから魅力的なんじゃないかな。
蜷川
とりあえず広げるだけ広げると、必ず収束する時がくるから、恐れずに広げてもいいんだと思うのよね。自分で映画を撮ってみて、ますますそう思いました。
久保
20代の頃からそう思ってました?
蜷川
ううん。若い頃は演じることで手一杯。「何も見えないくらい情熱的にお芝居をしたい、女優になりたい、女優以外のことは一切しない!」と、思っていましたから。けれども、演劇という”男”を愛して愛して愛し過ぎたために、一度、別れなければいけなくなったのね。芝居の中だけでは、自分の思いの全てを表しきれなくなっちゃった。
 


溢れてくるものを止めたら枯れちゃうわ!

久保
やっぱり、あふれてくるものを止めてはダメ。止めてしまったら枯れてしまうもの。私は42歳のときに、カメラマンとモロッコ、南フランス、スペイン、ベトナムを2年半くらいかけて回って作った写真集があるんです。
蜷川
撮る方で?
久保
撮られる方で。いままでの仕事の中では出せなかった自分……例えば、女の迷いや高飛車な顔。自分の中に潜んでいる女の内面を表現したくなったの。それでカメラマンをたぶらかして出かけちゃった(笑)。冒険でしたけど、見てくれた方が「この表情はいまの心にフィットする」と、言ってくださってね。とてもうれしかったな。
蜷川
美しさはそんなに単純なものではないわよね。素晴らしい風景や、きれいな花の美しさは確かにあるけど、年を重ねた皺の中にも人生の深みが生み出した美が隠れている。そういうのを表現したいし、見ていきたい。久保さん、これからは”おぞましいほどのエレガンス”を表現していきましょう(笑)。
久保
はい(笑)。ところで、これからやってみたいことは?
蜷川
長編映画を撮ろうと思ってます。テーマはまた、愚かな女!(笑) 人って、普段は愚かなことをしないように生きてるじゃない。でも心の底では「愛する人と肩を組んで世界の向こう側に行ってみたい」と、思っていたりする。そういう”愚かな”情念や思いを表現していこうと思ってるの。
久保
楽しみです。その世界に浸りたい。
 


大人の女は、”楽しさ”を武器に!

蜷川
私、最近、面白いなぁと思うのが、ちょっと面白半分にやる方が成功するのね。
久保
真面目にやりすぎないで。
蜷川
そう。「やっちゃおうかな」って感じの方がうまくいく。「私はこうやります!」って頑張ると、あまりうまくいかないの。やっぱり”遊び心”を大切にしていると、空気が楽しくなるから、周りも助けてくれるのよ。
久保
確かにそう。楽しそうにやってると、周りの人も喜んでたぶらかされてくれる。とにかく形はどうであれ、踏み出すことが大事なのかも知れないですね。
蜷川
新しい世界に踏み出すことはすごく不安ですよ。でも、不案内な世界でヨチヨチ歩きをしながらいろんな人に出会って、助けてもらって、ようやく自分が周囲によって生かされていることが理解できるのよ。
久保
それを経験しているかどうかで、人生の豊かさは変わってきますね。
蜷川
小さな出会いや、ささやかな好意を受け取り、感謝の気持ちを返すことで人間関係の”素晴らしい種”が育っていくからね。でも、それはある程度の年齢にならないと難しいかな。これは年を重ねる良さですね。……そうだ、久保さん、今度、何か一緒にやりましょう。
久保
ぜひ! 磨いておきます。
 


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